リンパ浮腫治療用弾性着衣を使用するときに
気を付けなければいけないこと
リンパ浮腫以外の疾患を治療中の人が
リンパ浮腫治療用弾性着衣を使用するとき
どんな病気でもそうですが、Aという病気の治療を進めていこうとしたときに、A以外の違う病気や症状があると、A以外の病気の治療が優先されて、Aの治療ができない、または、状況をよく見ながら行わなければならないことがあります。このAの治療ができなくなったりするA以外の病気を「禁忌症」または「適応禁忌」といいます。リンパ浮腫の治療は「スキンケア」「マニュアルリンパドレナージ」「圧迫療法」「運動療法」を、個人個人の症状に合わせて組み合わせて行いますが、マニュアルリンパドレナージや圧迫療法は、体の循環の仕組みに働きかける治療のために、様々な禁忌症(適応禁忌)があります。
特にマニュアルリンパドレナージは、細かく禁忌症が定められていますので、医師とよく相談しながら進める必要があります。
リンパ浮腫治療用弾性着衣(弾性ストッキングや弾性スリーブ、弾性グローブ)は、圧迫療法の一つで、やはり禁忌症があります。
【着用不可】リンパ浮腫治療用弾性着衣は使用できません
下記のような疾患・症状をお持ちの方には、使用ができません。これを絶対禁忌と言います。- 重度の動脈血行障害
- 末梢の閉そく性動脈疾患
- うっ血性心不全(心性浮腫)
- 感染症による急性炎症
- 有痛性青股腫
- 化膿性静脈炎
【医師と相談】注意してリンパ浮腫治療用弾性着衣を使用する必要がある場合
下記のような場合は、医師とよく相談して、リンパ浮腫治療用弾性着衣を使用するかどうか、使用するとすればどのように使用するかを決めていきます。これは相対禁忌と言います。- 高血圧
- 狭心症
- 不整脈
- 強皮症
- 慢性関節リウマチ
- ズデック症候群
- 糖尿病
- 繊維過敏症
- 患部に知覚障害がある
- 乳幼児
リンパ浮腫治療用弾性着衣を使用するときの注意
《厳禁》- 洗濯の際に塩素系漂白剤を使用する
- 洗濯の際に柔軟剤使用する
- 乾燥させるために乾燥機を使用する
- ドライクリーニングにだす
- 直射日光にあてる
- アイロンをかける
《十分に注意》
- 弾性着衣の「圧力」はカタログや製品の梱包に明記されています。この圧力は通常の使用であれば6カ月間維持できるように作られています。6カ月を過ぎるとカタログ等に表示されている圧力が発揮できませんので、新しいものに「買い替え」が必要になります。(使用していなくても6カ月経過後の圧力は保証されません)
- 装着するときに、ねじれやしわにならないように注意しましょう。しわになった場合は、無理にひっぱらないようにし、しわをやさしく撫でてのばします。ゴム手袋を使用すると便利!!
- 装着の時は、着衣を無理に強く引っ張らずに、少しずつ引き上げていきます。
- 上端は絶対に折り返して使用しません。
- 握力が弱い方や筋力の弱い方にはストッキングドナーという装着を補助する器具を使用することをお勧めします。
- 伸びた爪や指輪・ブレスレットなどの貴金属で破けないように注意しましょう。肌がひどく荒れた状態での装着にも注意が必要です。
- 油性の軟膏・クリームは布地を傷めるので弾性着衣の使用前に使用部位に油性の軟膏やクリームを使用しないようにします。
- 脱水機は使用しないことをお勧めします。
- 使用する前に、使用する部位(腕または脚)の保湿を適切に行ってください。
- 医師または専門家から特別の指示がない限り、夜間(就寝中)の使用はしません。
- 弾性着衣には予防的効果があるという科学的根拠(エビデンス)は、示されていません。《上肢用(腕用)については、一部条件付きで予防に有用であるとの評価もあります》